第五話 「数奇」
鏑矢 右京
ジュラ(白石 朧)
阿久津 キョウ
女
謎の女(伽陀 深ヶ理)
ナレーション
鏑「こ…ろす…ころ…す…こ…。」
ジ「…これは賭けかも知れない。」
鏑「こ…ろ…。」
ジ「だが…君に与えよう…異形の力を…。」
第五話 「数奇」
ナ「6月19日 雨 灰川市灰川町 1万人ほどの人口が生活する都心から車で3時間ほどの自然の多い町である。ここ灰川町では過去に不可解な未解決事件の起きた現場でもある。
しかし、この未解決事件は他にもあった…。
5年前、ある家の母子が殺害され犯人は未だ逃走中。夫も頭部を損傷する大けがを負ったが、奇跡的に回復。部屋が薄暗く犯人の顔を見ていないと供述し、警察の捜査も行き詰っていた。
一時期は20年前の殺人事件を関連ではないかと噂されたが、手口が異なることや現場の凄惨さから、別の事件として噂が広まり、こちらもまた語り継がれている。」
ジ「右京君。もし君が良ければ会ってほしい人がいるんだ。」
鏑「…俺に?」
ジ「君だからこそ…かな。」
鏑「…俺だから?それは事件に関係ある人間なのか?」
ジ「いや、全くではないが、君と境遇が似ている…というところまで話しておく。」
鏑「勿体つけるな。俺は忙しいんだ。」
ジ「社長がいなくても会社は回る。それにこうして君は平日だというのに酒を煽りながらここにいるじゃないか。」
鏑「…ちっ。んで?今からそいつの所に行くのか?」
ジ「いや、明日はどうかな?久しぶりに会ったわけだし、念のため頭の検査をしたいのもある。」
鏑「あぁ?病院に行けってのか?…ん?それって…。」
ジ「明日、病院で待っているよ。検査をするわけだし、今夜はお酒を控えてほしい。」
鏑「…わかった。俺も会ってみたいと思ったしな。」
ジ「じゃあ明日。」
ナ「ジュラは灰川駅で鏑矢 右京を下ろし走り去った。」
鏑「阿久津…キョウか。」
ナ「6月20日 雨 本格的な梅雨入りとなり、各地では雨の日が続いていた。昨日、ジュラに促されるままに鏑矢 右京は灰川記念病院で検査を。相変わらずくたびれたスーツを着て。」
鏑「ったく…病院は嫌なんだよ。あれこれ面倒くせぇから…。」
ジ「お疲れ様。右京君。ガンマGTPが高めだけど、それ以外は特に問題ないようだ。」
鏑「これも異形の力ってやつか?」
ジ「君の回復力の強さだろうね。じゃなければ全ての数値が正常なはずだから。お酒は控えるように。」
鏑「はいはい…。んで?会わせたい奴ってここにいるんだろ?」
ジ「あぁ、周りに人がいると話しにくいこともあるだろうと思ってね。裏手の林に呼び出してある。」
鏑「あぁ、話す内容の中身としておそらく周りに人がいない方がいいとは思うけどよ…そんなところに?」
ジ「彼は人が苦手なんですよ。」
ナ「ジュラは白衣のポケットに手を入れたまま、鏑矢 右京に背を向け歩き出した。その後を追うように鏑矢 右京も続く。一般外来の駐車場の裏手にある林が見えてきたとき、一人の少年が立っていた。」
ジ「彼ですよ。」
ナ「立っていたのは阿久津 キョウだった。入院着を着たまま林の中を覗くように背を向けていた。」
ジ「キョウ君。お待たせ。」
ナ「阿久津 キョウはジュラの声に一瞬、体をビクつかせ振り向いた。」
阿「先生…ここで用事ってなんですか…?ん?」
ジ「君に会わせたい人がいてね。紹介しよう。鏑矢 右京君です。」
鏑(…ん?どっかで見覚えがあるような…。そんなことないか。しかし、こんなひょろっちぃガキが事件に巻き込まれたっていうのか…?)
阿「…あ、あの…ど、どうも…。」
鏑(ジュラの奴、こいつから何を聞き出せっていうんだ…。)
ジ「そして彼が阿久津 キョウ君です。」
鏑「鏑矢 右京だ。よろしく。」
ジ「さて、先ず先に二人の共通点を話そう。見た目からして正反対の二人だけど、凄惨な事件の被害者同士…なんです。」
鏑「…異形が絡んだんだったらお前もそうなんだろうな…。」
阿「…はい。」
ジ「私が二人を引き合わせたかったのは情報交換…ではなく、一種のグループカウンセリングとして知り合わせたかったのです。」
鏑「グループカウンセリング…?」
ジ「そうです。生まれも育ちも違う二人ですが、心に深い傷を負ったもの同士。そのため、一人で抱える苦悩を誰かによって…」
鏑「けっ!冗談じゃない!俺は異形を…涼子と萌絵を殺したアイツをぶち殺すため、その手掛かりを掴むためここに来た!傷の舐めあいなら帰るぜ!」
ジ「ちょっと待ちなさい、右京君。二人は同じトラウマを持っています。互いに苦悩し、共通の仇となる存在がいるのです。君たちの憎みや悲しみ、怒り、絶望は一人で抱え込めるものではありません。」
阿「…。」
ジ「どうですか?一度二人で話してみませんか?キョウ君はあまり外の世界を知りません。右京君の話を聞き、自分の世界だけではない他人の世界を知ることで学べることもあるでしょう。
右京君はキョウ君の話を聞き、何か手がかりとなる情報があるかも知れません。」
鏑「…10分だ。」
阿「え?」
鏑「お前の話を10分聞こう。それで何も手がかりが掴めなかったらお前は荷物をまとめこの町から出ろ。」
阿「…。」
鏑「俺は一人でも異形の手がかりを掴んで復讐する!お前には悪いが藁をも縋る思いでここに来た。」
阿「…はい。」
ジ「もし、キョウ君の話を聞いて手がかりとなる情報があれば、右京君もお話ししてもらえますか?」
鏑「ジュラ…お前から話せば済むことだろ?」
ジ「君の言葉だから真実味があるのです。」
鏑「…ちっ。わかったよ。」
ジ「では決まりですね。私は少し席を外します。予約の患者がそろそろ来る頃なので。」
阿「え…?先生…?」
ジ「大丈夫ですよ。キョウ君。右京君は苛立ってはいますが、根は優しい子ですから。それに30分ほどで戻ります。」
鏑「んだよ、初対面同士で話せる内容じゃねぇだろ?」
ジ「だからここを選んだんです。人目のあるところでは話しにくいでしょう。では、私は行きますね。」
ナ「ジュラはそう言い残すと、白衣を翻すように二人に背を向け病棟へ足を運んだ。」
阿「…あ…。」
鏑「はぁ…ジュラの奴行っちまった。」
阿「…。」
鏑「…話せよ。」
阿「…え?情報と言っても…。」
鏑「ちげぇよ。お前にあったことだ。何があった?」
ナ「阿久津 キョウは幼馴染の事、あの晩にあった出来事を話し出した。鏑矢 右京は時折、ウイスキーを飲みながら黙って聞いていた。」
阿「…先生曰く、僕には僕の知らない誰かが僕の中にいるようです。なので…ごめんなさい。途中から記憶がなく、気が付いたら白石先生と病室にいました。」
ナ「鏑矢 右京は神妙な面持ちで口を開いた。」
鏑「…それじゃ…その…お前の中の奴なら最後まで見てたってことか?」
阿「先生の話だと…そのようです。」
鏑「…そっか。」
阿「…なんか…すみません。」
鏑「男がすぐに謝るな。」
阿「…。」
鏑「一つ聞きたい。」
阿「…なんですか?」
鏑「お前の話では、その…中の人間。縁(えにし)だったか。」
阿「…はい。」
鏑「刃物で異形を仕留めたんだよな?」
阿「…そのようです。」
鏑「まぁ、お前に記憶がないからジュラの話でのことだと思うが…。」
阿「あの…。」
鏑「あ?」
阿「その…ジュラと言うのは…?」
鏑「あいつの異形名?みたいなもんだ。」
阿「異形…名…。」
鏑「なぁ…お前は幼馴染の仇をとりたいか?」
阿「え?」
鏑「すでに死んじまってるんだろ?お前を襲った異形は。」
阿「…はい。」
鏑「他にも存在するかも知れない異形が現れた時、お前の幼馴染を手にかけた異形の仲間だと知った時…お前はその異形を殺したいか?」
阿「…正直、僕にはわかりません。」
鏑「だとしたら、悪いことは言わねぇ。どっか遠く、誰もお前を知らない土地で生きていけ。」
阿「…え?」
鏑「俺にもその異形が何者で、お前の場合にはお前を知る人間が異形になった。また同じことが起きないとは限らない。」
阿「…そうですね。」
鏑「今の話を聞いて1つわかったのは、異形力を使えば刃物でも殺せること。そして1つ想定されたのは、俺の家族を殺したのが、もしかしたら俺を知る者なのかも知れないってことだ。」
阿「だけど…。」
鏑「お前の場合は偶然かも知れない。だが俺にはどんな糸口でも可能性の一つとして想定しておきたいんだ。」
阿「…はい。」
鏑「目的を持って対峙する者、目的が定まらなくて対峙する者。次に異形が現れた時、お前の中の縁がお前を救ってくれるとは限らない。」
阿「…そうですね。」
鏑「だからお前は…」
阿「鏑矢さん。」
鏑「あ?」
阿「僕はまだ…鏑矢さんの話を聞いてません…。」
鏑「…。」
阿「僕は先生とこれからを話し合いました。優里香が残した思い。それを…無駄にはしたくありません。だけどまだ頭が混乱したり、未だに優里香を失ったことを理解できずにいたりして、まだ自覚が持てずにいます。」
鏑「…。」
阿「お願いです。僕にも鏑矢さんの話を聞かせてください。」
鏑「…。」
阿「お願いします…。」
鏑「…どっから話せばいいか…。」
阿「鏑矢さん…。」
ナ「鏑矢 右京は涼子と萌絵を失った夜の話をした。喉を詰まらせるとウイスキーを煽り、話を続けた。」
阿「…。」
鏑「俺はジュラに救われ今に至る。あの出来事を忘れた日はない。俺を愛してくれた家族。それを突然、理由もわからず殺された。だから俺はそいつを見つけるまで異形を狩り続けるつもりだ。
と、言ってもお前の事件が起きるまで異形が姿を現した情報はなかったがな。」
阿「鏑矢さん…。」
鏑「お前は俺の話を聞いてどう思った。俺の事ではなくお前自身についてだ。」
阿「僕は…。」
ナ「二人が林で会話をしている最中に、林の中では奇妙な葉の掠れた音がしていた。」
阿「僕は…僕自身は鏑矢さんの話…」
鏑「はっ!」
阿「どうしました?」
鏑「シー…静かにしろ…。
(カサカサ…カサカサカサ…。」
ナ「掠れた音は少しずつ二人との間合いを図る様に徐々に近づいてきていた。」
(カサカサ…カサ…。)
鏑「何かいる…この林の中…。」
阿「え?」
女「きしゃぁぁぁぁぁあ!」
ナ「林から飛び出してきたのはナース服を着た女だった。女はすでに異形の顔をしており、メスを持って襲い掛かってきた。」
女「シャァァァァ!」
ナ「両手に数本のメスを握り阿久津 キョウへ飛び掛かった。」
阿「う…うわぁぁぁあ!」
鏑「ボケっとすんな!後ろへ飛べぇ!」
ナ「鏑矢 右京の怒声で阿久津 キョウは後方へ倒れこむようにメスを避けた。」
阿「こ、これは…。」
鏑「…間違いない。この顔立ちは…異形だ!」
ナ「鏑矢 右京は体制を整え緩んだネクタイに手を伸ばした。」
鏑「異形の女!俺の復讐に付き合ってもらうぜ!」
女「ふぅーふぅーふぅー…しゃぁぁぁぁああ!!」
ナ「女は鏑矢 右京目掛けて突進してくる。鏑矢 右京は両手のメスを警戒しながら前かがみになりつつ右足を軸に体を回転させ左回し蹴りを浴びせた。」
鏑「突進してくるバカに間合いを取るのに蹴り技が有効だってことを覚えてこい!」
女「ぐっ…ふぅーふぅーふぅー…」
鏑「こいつ…言葉を話せないのか?」
女「ふんっ!」
鏑「くそっ…水下に蹴りを入れてもそんなにダメージねぇってか…。」
女「ふぅーふぅーふぅー…しゃぁぁぁぁああ!!」
鏑「ちっ!バカの一つ覚えの突進かよ!もう一撃食らわせてやる!」
女「ふんっ…しゃぁぁぁぁああ!!」
鏑「なっ…避けた??…やべぇ…懐に入っちまう…!」
阿「か、鏑矢さぁぁん!」
女「しぇあっ!!」
ナ「女は両手のメスで鏑矢 右京を切り裂いた。ガードしたとはいえ、鏑矢 右京の両腕はメスで深手のダメージを負った。」
鏑「くっ…打撃なら耐えられるが、流石に刃物はいてぇな…。」
女「ふぅーふぅーふぅー…しゃぁぁぁああ!」
鏑「くそ!こんな間合いで無軌道な攻撃じゃ防ぎきれねぇ!阿久津!逃げろ!」
阿「あ、ああ、あああ…。」
女「ぶしゃー!しゃぁぁあ!!」
ナ「女の猛攻は止まらない。腕をムチのようにしならせ、メスで鏑矢 右京の腕を確実に切り裂いていた。鏑矢 右京は回避をしながらも足技を続けていたが、それを上回る速さで女のメスが襲い掛かる。」
鏑「ちぃっ…!こんなデタラメな攻撃…くっ!かわし切れるわけねぇ…うをっ!やべっ!」
ナ「鏑矢 右京は足元の空き瓶を踏み、体制を崩し後ろへ倒れこんでしまった。すかさず女は鏑矢 右京に覆いかぶさり胸を目掛けて振り下ろす。」
女「ぎぎっ…しゃぁぁあああ!!」
阿「こ…こわ…こわい…。」
ナ「咄嗟に女の手首を掴み、体を捩じり避けるが、鏑矢 右京の肩にメスが刺さった。」
鏑「ぐぅ…あ、あぶねぇ…。冗談にならねぇぞこの状況…。せめて両手が使えれば…。」
阿「はぁ…はぁ…はぁ…。」
女「ぐっぐぐぐぐ…がぁぁぁあああ!!!」
鏑「なんだ…コイツの力…本当に女か…?このままじゃ抉られる…!」
阿「はぁはぁはぁ…。」
女「ふぅーふぅーふぅー…がぁぁぁぁぁああ!!」
阿「…り…か…。ゆ…か…。ゆり…か…優里香…優里香ぁあ!」
鏑「ぐわぁあああ!!ぐぅぅ…!!」
ナ「鏑矢 右京の肩に刺さった女のメスが少しずつ下がり、肉を切り裂き始めた。その姿を震えながら見ていた阿久津 キョウの様子が変化していった。」
鏑「ち、力が…はいら…ねぇ…!」
女「ぐぅぅぅぅ!がぁぁぁぁぁああ!!」
阿「優里香ぁ!!」
ナ「阿久津 キョウは幼馴染の名前を叫びながら女に向かって突進した。」
阿「優里香ぁぁ!!うわぁぁぁぁあああ!!」
鏑「て、てめぇ…!逃げろっつったろうが!」
阿「うわぁぁぁあああ!!」
ナ「阿久津 キョウはできる限りの力で女に体当たりをした。女は鏑矢 右京に集中していたため、側面からの体当たりにバランスを崩し地面に倒れた。」
阿「はぁはぁはぁはぁはぁ…うわぁぁぁぁあああ!!」
鏑「くっ…いてぇ…。けど!今はこのチャンス…活かすぞ!」
ナ「鏑矢 右京はそう叫ぶと両手で一気にネクタイを締めあげた。」
鏑「がぁはっ…!はぁ…はぁ…!」
ナ「引き絞ったネクタイの首元から数枚のカミソリが頸動脈を切り裂き鮮血がほとばしる。」
鏑「ぐはっ!いてぇ…。あー目の前がクラクラしてきた…。おい!異形の女…!」
女「ふぅーふぅー…がぁぁぁあ!!」
鏑「…一気にケリつけてやる!
」
ナ「傷口から噴き出す出血はくたびれたスーツを真っ赤に染めた。致死量に達したとき、異形の力が目覚める。」
女「うしゃぁぁぁぁぁああ!!」
ナ「再び無軌道なメスの動きについていくことが出来なかったが、異形の力を発揮した鏑矢 右京には素早い動きもスローモーションで目視することが可能となった。」
鏑「へぇー…異形の力って…こんな感覚なんだな…。」
女「がぁぁぁぁぁああ!!!」
鏑「こんな力がありゃ…異形なんざ…敵じゃねぇ!!こいよ…クソビッチがぁ!!」
女「うしゃぁぁぁぁああ!!」
鏑「へぇ…体を揺さぶる動きを覚えたか…だが直線で仕掛ける特攻は…的にしやすいんだよ!!」
ナ「鏑矢 右京の強烈な左回し蹴りが女の顔面に直撃した。正面から全力で突撃してきた女は鏑矢 右京の蹴りの直撃を受けたことで、可動範囲を超えた首は元に戻らず、女はうごめきながら痙攣を起こしながら倒れた。」
女「がっ…ががぁ…がふっ…。」
鏑「…はぁはぁはぁ。やべぇなこれ…リバウンドが…。」
阿「鏑矢さん!血を!女の血を飲んでください!」
鏑「…血…?あぁ…そうだった…。くそっ…身体…重てぇ…。」
ナ「鏑矢 右京は異形の力を使ったことで瀕死の身体に負荷をかけていた。その反動で全身に走る倦怠感が襲ってきて動くことすらままならなかったが、女のメスを拾い女の首を掻き切った。」
鏑「ちっ…くせぇ…。じゅるっ…ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…。」
女「あがっ…あがぁ…がぁっ…。」
鏑「うるせぇんだよクソビッチ…。ゴクッ…ゴクッ…。」
ナ「鏑矢 右京は血液を補充し、頃合いを見て女から離れた。その瞬間、女の身体は弾け飛び、やがて魂にも似たものが舞い出たのを食らった。」
鏑「あーあ、一張羅が台無しだ…ごめんな…りょ…うこ…。」
阿「鏑矢さん?…鏑矢さん!しっかりしてください!」
ジ「キョウ君。大丈夫です。」
阿「あ、白石先生!鏑矢さんが!」
ジ「疲れて寝ているだけです。とは言え急いで病室に運びましょう。手伝ってくれますか?」
阿「あ、はい!」
ジ「では肩を借りますよ。そっと立ち上がりますよ?せーの…。」
鏑「…うっ…うんっ…あ…あぁ…。」
阿「鏑矢さん!」
鏑「…阿久津…ありがとな…。」
阿「…え?」
鏑「…それ…を…いいた…かった…。」
ジ「右京君…?また…眠ったようですね。急ぎますよ?」
阿「はい!」
ナ「ジュラと阿久津 キョウは鏑矢 右京を抱え、病棟に向かった。その姿をじっと見送る様に眺める女がいた。」
謎「ふふっ…可愛い…。それと…ジュラ?ふーん。あなたはそういう存在なのね…。とても楽しみ…。さ、坊や…行きましょう…。」
続く
次回 「闇の中へ」