一人台本(仮)

2024年02月17日

「さてと、BGMもよしっと。はいじゃあ早速やっていきますか!」

「今夜も雑談配信やっていきまーす。えー今夜はちょっと不可解な話をしてみようかな?」

「リスナーの皆さんって…多分ほとんどの人がすき焼きって口にしたことありますよね?」

「鍋って冬に食べる物って感じますが、わたしは夏でも食べちゃうんです。」

「鍋にさっと牛脂を塗って牛肉を焼き、ネギや白菜を追加してすき焼きの鍋地を流しグツグツ…。」

「あー、食べたくなってきた。あ、そうそう。で、不可解な話なんですけど…。こんなことってあるんですね…。」

「先日、スーパーへ買い物に行ったんです。仕事の帰りってこともあり疲れてはいたんですが、週末だし翌日はお休みだし、彼氏が泊まりに来るっていうし…。」

「ふふふ。あ、でね?夕方買い物に行ったの。さーって今夜は何にしよーかなー?って色々物色してたの。」

「そしたらね?わたしの目にピタッと止まり離れない…真っ赤で艶やかな牛肉が心を掴んできたの。」

「まぁ、給料日後だし、ちょっと奮発しちゃおっかなぁー!って手に取ったら、なんと100gで580円もしたんですよ。」

「どうしよーかなって手に取ったまま悩んでたんです。でもきっとこんな霜降りのお肉ですき焼き食べたら美味しそうだなぁーって思って、20分くらい悩んだ挙句カゴに入れたんです。」

「もう口の中はすき焼きになってるから、ここまで来たら奮発してたまごも普段より少しお高めの1パック389円のを選び、春菊、白菜、えのき、ねぎ、しらたき、焼き豆腐…。」

「あーだめだ、思い出しただけで口の中でよだれが…。」

「もうね?頭の中はぷっくり膨らんだ卵を箸でチャンチャンチャンチャンとかき混ぜ、ほんのり赤みの残ったお肉を絡め…。たまんない!そう気持ちが昂りながらレジに並んだんです。」

「お会計が1回で6000円を超えちゃってね、目を見開いたまましばらく閉じれなかったの。もう目がカッピカピになりながら、買い物袋に買ったものを詰めてたのね?」

「あ、いっけね!牛脂買うの忘れてた!って思って肉売り場に戻ったの。そしたらね…?」

「なんかおかしいの、さっきまでそんなに肉売り場に人がいなかったのになぜか人だかりができてたんですよ。」

「しかもね?主婦があの高いお肉を2パック3パックと手に持ってたの。」

「でね?その時、わたし…見ちゃったんですよ!おかしいんだ!わたしの肉のパックにはないものがその主婦のパックには確かにあるんだ!」

「5割引きのシールが…。いや、そんなはずはない!だってついさっきまでわたしはあそこであの主婦と同じ肉を選んでたの!」

「でも…わたしの肉には値引きシールがなかったんですよ…。」

「その瞬間!店内アナウンスを聞いてわたしは背筋が凍る思いをしたんです…。」

「タイムセールを開始します…と。」

「ぞぞぞぞぞぞ!っと一瞬のうちに血の気が引いて体の芯から冷えました…。」

「たった10分というちょっとした仕事の休憩時間程度のわずかな時の流れがわたしの財布に渾身の一撃を食らわせてきたんです。」

「帰宅後、わたしは鍋の前で一人泣きました。あれほどまでに楽しみにしていたすき焼きも、とても虚しい肉の煮物にしか見えなくなりました。」

「今でもはっきり思い出せます。店内アナウンスのやる気のない店長のタイムセールを開始しますの言葉が…。」

「わたしは一人で鍋を食べ終え、カッピカピになった目もいつしか涙でいっぱいになってました。」

「みんなも買い物をするときには時間を気にしてね?」

「はぁ…なーんて、彼氏もいないわたしが一人ですき焼きしたって話をしました。まぁ本当は豚肉でしたけど。今日もリスナー0だしそろそろ枠閉じるかなぁ…。韓国ドラマ見て寝よ。」

おしまい

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