冬キャンプ

2022年03月08日

井之頭♂(30代後半):キャンプの仕切り役だが計画性が乏しい

藤木 ♂(30代後半):井之頭とは会社の同僚 比較的に他人任せ

花沢 ♀(20代後半):二人の後輩 アクティブ派


井「いやー、冬キャンプってさ、寒いのについついテンション上がるよなぁ!」

「あぁ。」

井「昨日もさ、夜にバーベキューやったろ?外で食う飯ってなんであんなに美味いんだろうなぁ!」

「そうだな。」

井「仕事のストレスとか色んなものが嘘みたいに、こうなんていうか…体から消え失せるみたいな?」

「あぁ。」

井「どうしたんだよ、藤木。こーんなに景色もよくて、空気もうまくてさぁー!スマホも圏外だから外界とも連絡ないし、なーんか普段の生活って息苦しいことが多いんだなぁーって思い知らされるよなぁ!」

「そうだな。」

井「どうした?昨日はあんなに楽しそうだったのに、なんでそんなに暗いんだ?」

「え?それ本気で言ってる?」

井「なんで?」

「この状況で自然とそれが言えちゃう神経に理解出来ないんですけど。」

井「ちょっ…どうした?」

「どうしたじゃねーよ!一面、雪景色じゃねーか!」

井「いやー綺麗だよなぁー!ザ!白銀!」

「ザ!白銀!じゃねーよ!どうやって帰るんだよ!」

井「いや、昨日まではさぁ、雪なんて降ってなかったからさぁ…。」

「いや、だとしてもだよ?お前、キャンプ来る前に俺たちになんて言った?」

井「え?」

「え?じゃねーよ!山の天候なめんなって言ったんだよ!」

井「ん?あ、あー!言ったなぁー!ははは!」

「で、急いで荷物まとめて帰ろうって言ったとき、なんて言った?」

井「えーっと、あ!思い出した!タイヤのチェーンがないっていったな!ははは!」

「笑ってんじゃねーよ!」

「ねぇねぇ二人とも!いい物持ってきたー!」

「今それどころじゃねーんだよ!」

「どうしたの?喧嘩?」

井「いや、喧嘩ってわけじゃないんだけどねぇ。」

「よくわかんないけど、みんなでココナッツ食べない?」

井「ココナッツ?季節感のないものどっから持ってきたんだよ!」

「てか、丸まる持ってきてるけど、どうやってココナッツ割るんだよ!」

「え?このココナッツをコイツの頭で割るんだよ…。ふんっ!」

井「うわっ!ちょっとぉ!危ないじゃん!そんなので殴られたら死んじゃうから!」

「いっぺん死んだほうがいいんじゃないですか?」

井「君ってそんな子だったっけ?」

「もー!そんなことはどうでもいいんだよ!どうやって帰るんだよ!」

井「うーん、JAF呼ぶ?」

「スマホ圏外だろうが!」

井「うーん、管理人来ないかなぁ…。」

「お前がシーズンオフで管理人もいないから自由だぜ!って言ってここ決めたんじゃん!」

井「いやー、計算外だったな!ははは!」

「俺がココナッツで殺すぞ?」

井「いや、殺すなってぇ。もしー、俺が死んだら誰が運転するんだ?」

「チェーンがねぇーからお前死んでも変わんねーよ!」

井「ほら、目の前の景色を楽しもうぜ!こんな機会滅多にないぜ?」

「ねえ二人ともー!いいもの持ってきたよー!」

井「今度はなにもってきたの?」

「冷やし中華!」

井「だから季節感のないもの持ってくんなよ!」

「えー、美味しいのにぃ。」

「まじでどうすんだよ!明日俺たち仕事だぞ?」

井「まあそうなんだけど…。」

「いや、言い訳とか聞きたくねぇーから!」

井「実は俺…明日、有給取ってるんだわ。」

「はぁ?そうゆうとこだけしっかりしてんな!お前!」

井「そうなんだよ、昔からよく言われる!ふふふ。」

「誉めてねーから!」

「ねぇ、食べないの?冷やし中華。伸びちゃうよ?」

「さっきからお前もどっから持ってきてんだよ!」

「え?そこ真っ直ぐ行ったところにスーパーあったから。」

「スーパー?」

井「え?そんなのあったの?」

「うん、あとこれ売ってた。」

「あれ?これって…。」

井「車のチェーンじゃん!おおお!これで帰れるじゃん!」

「おおお!よくやった!花沢!」

「跪け!」

井「え?」

「跪いてほめたたえよ!」

井「ちょっと待ってよぉ。後輩に跪くとか無理だってぇ。」

「ここは言うことを聞けよ!お前のミスなんだから!」

「いや、お前もだよ!藤木!」

「え?俺も?」

「そうだよ!」

「え?ちょっ、え?なんで?だって井之頭のミスだよ?」

「うむ。」

「なんか混乱してる?なんで俺も跪くの?」

「お前も文句しか言わずに行動しないからだ!」

「えー、ちょっとぉ。」

井「藤木も一緒なら我慢して頑張る!」

「頑張るって…まじでぇ?」

「ほら!早くしな!」

「あーもう!」

井「申し訳ありません!チェーンありがとうございます!」

「はやっ!」

「ほら、藤木!お前もだよ!ココナッツで頭割るぞ?」

「どーもすいませんでした。」

「よろしい!さぁ!お前たち!荷物をまとめるんだ!」

井「そうだな、いや、花沢。本当ありがとう!」

「はぁ…わかったよ。」

井「よし!藤木!俺たちこれで帰れるぞ!

「そうだな。」

井「ははは!やっぱ冬の山は最高だな!さあ見ろ、藤木!絶景だろ?ザ!白銀!」

「調子に乗ってんなよ井之頭!ココナッツでてめぇーの頭カチ割るぞ!」

「うわっ…こわぁ…。」


おしまい

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