生徒会長の主張
「みんな。聞いてほしい。今日集まってもらったのは他でもない。今年の学園祭についての説明およびそれに準ずるルールを発表するため…だった。」
「だがその前に聞いてほしいことが一つある。私はここ市立池渇(いちりつ いけかわ)高校に入学したのは今から2年前の事。清い学び舎、そしてあふれるばかりの桜の木々に囲まれた我が母校…。」
「胸を躍らせ、希望と夢を抱いて、ついには生徒会長にまでなった。ここまでの道のりは決して容易(たやす)くはなく、先生や級友、そして私を慕う後輩のみんなによって、
私はここに登壇(とうだん)し、生徒諸君の前でこうして学園生活の思い出を一つでも多く残してもらうべく、日々恩師のご指導や生徒会の仲間たちと協力しあい、その内容を報告させてもらっている。」
「そんな平凡な青春の1ページ…。だけど今日はいつもと違うことが起きた。とても由々しき問題が今、この体育館の壇上(だんじょう)で起きている。」
「今、私は脱糞をしている。それもこの上なく全力でだ。この壇上(だんじょう)に登壇(とうだん)する1分前まで激しい腹部への圧力と戦い、肛門括約筋をフルに活躍(かつやく)させ、できることなら一度排便をするためにこの場を退場したかった。」
「だが、理性をねじ伏せ本能のままに排泄しようと、肛門をこじ開けんばかりの便意は、諸君らの顔を見た瞬間におさまった。」
「よし、これはいける!と判断し学園祭の報告書を開いた瞬間、スッ…と気体が肛門をすり抜けようとしていた。私は膨張した腹部への圧迫を減少させようと、僅かばかりに肛門を開いた。」
「「助かった。少しでも膨張し暴走していた大腸が静まり、これでつま先立ちも、内また立ちもせず、堂々と発表できる!」。そう思った淡い期待は宙に舞い儚く消えていった。
すり抜けたのは気体ではなく絶望という名の脱糞だった。」
「終わった…積み重ねてきた3年間が音を立てて崩れていった。諸君は聞いたことがあるだろうか。心の中で聞こえる崩れる音が肛門からあふれ出す音を…。」
「しかし!私は今、人としての尊厳を失う出来事であるはずなのに…とても清々しい。きっと諸君らにも経験があるはずなんだ。自尊心の維持と便意との戦い。そして桃源郷にも似たトイレへの切望。」
「私は青春の1ページをまさか下着に刻み込むことになるとは思わなかった。学園祭がなんだ、生徒会長がなんだ、その立場を利用して学園1のマドンナを口説く計画がなんだ!」
「みんなに問う!これが君たちのあこがれであった生徒会長の真の姿だとして、君たちは私を軽蔑するであろうか?」
「もし私が、この全校集会の最中に脱糞した生徒がいたとして、私は全力で紙を持参し駆けつけるだろう。なぜかって?私たち池渇(いけかわ)高校は誰一人欠くことなく、私の友であり仲間だからだ。」
「徐々にずれ下がる下着…太ももに伝うぬくもり。替えのズボンがないことも、帰りはジャージであることも今となっては小さき事…。
つい数分前まで全校生徒の前で晒してしまう羞恥を想像するとともに、今朝飲んだ牛乳に後悔どころか恨みすら覚えていた。」
「今日は貴重な体験をさせてもらった。みんなありがとう。さて、前置きはここまでにして今年の学園祭についてだが、先ほどまで腹痛と戦い、手に汗を滲ませ資料を握りつぶしてしまった。改めて後日全校集会を開こうと思う。」
「私から生徒諸君への報告は以上です。先生方、大変恐縮ですが、私が降壇(こうだん)した後の清掃と臨時の替えの下着…よろしくお願いいたします。」
おしまい