都合のいい男ほど面倒臭い
高橋 優也 30代:モテないけど女の子とは仲良くなれる
三竹 沙枝 20代:他人を褒めるのが上手 だが本心ではあまり関心がない
岩波 太一 30代:三竹沙枝の上司。妻子持ちだが沙枝と浮気している。
高「おつかれーぃ!」
三「かんぱーい!」
高「ぷはぁー!くぅぅぅ!染みるぅー!」
三「はぁ…。おいし!」
高「食べ物何頼む?ここまじで何でも美味いんだよ。」
三「うーん、どれにしよっかぁなー!優也はどれが好き?」
高「え?俺?そうだなぁ…ここに来ると必ず頼むのは…あ、これこれ。」
三「へぇー、揚げ出し豆腐なんだぁー?」
高「そそ、ここの揚げ出し豆腐さ、上のとこ見て見な?とろろこぶが乗ってるんだよ。」
三「あー、おいしそー!じゃあこれたのも!あとは…アボガドとエビのサラダ!」
高「アボガドねぇ…。」
三「え?嫌い?」
高「あ、いや、食べたことないだけ!」
三「え?そうなの?じゃあやめる?」
高「いやいやいやいや、頼みなよ!俺も初めて食べてみるから!」
三「ほんと!?嬉しい!私アボガド大好きなんだ!へへへ。あとは…これもたのもっと!」
高「ははは、どんどん頼んで?」
三(久しぶりの無料メシーっと。…てか、顔近くね?)
高「…ん?あ、LINEだ。はぁ…上司からだ。…未読のままでいいや。」
三「ねね、優也はさ、最近仕事忙しいの?」
高「あー、うーん。まぁ、ぼちぼちってとこかな。」
三「そういえば優也ってさ、どんな仕事してるの?」
高「まぁ、お客さんの相談に乗ったり、後は外回りとかやってるんだよ。」
三「へぇー、大変そう。」
高「いやいや、そうでもないよ?」
三(まぁ、あまり興味ないけど。)
高「あと遅番とかもあるしねぁ。」
三「そっかぁ。ご飯ってどうしてるの?」
高「一人で食べても味気ないしさ、近所の定食屋が我が家の台所ってとこかな!」
三「ふーん、いい人いないの?」
高「い、い、いねーよ!
三(まぁ、いたら私とご飯いかないわな。)
高「いたら定食屋のおばちゃんと仲良くなってねーしっ!」
三「いや、いても定食屋のおばちゃんとは仲良くしてよ!優也って人当たりいいし、すぐ人と仲良くなれるんだから!」
高「え?そうか?」
三「うん!だって私とも仲良くしてくれてるじゃん?」
高「ま、まぁ…そうだけど。」
三「優也ってさ、私の悩みとかも真剣に聞いてくれて…力にもなってくれたじゃん?」
高「え?あーそうだっけ?」
三「えー!覚えてないのー?」
高「あー、えーっと…。」
三「あの時、私嬉しかったんだから…。」
高「え?え?お、お、覚えてるよ!沙枝ちゃんが元カレとのことで酷く落ち込んでた時だろ?」
三「うん。あの時別れる決意に背中を押してくれなかったら未だに付き合ってたかも…。」
高「あれは大変だったな。アイドルの追っかけまではよかったけど、その衣装を着せられて、挙句振付までやらされてたんだもんな。」
三「そうだよ。元カレ相手にステージみたいなことやらされて、「みんなー!今日はキュルミンのライブに集まってくれて!ありがとー!」って言えって言われて冷めたんだから。」
高「しかしよかったな、別れられて。」
三「うん、優也のおかげだよ!」
高「そっか。」
三「でも優也って困ってる人がいると何だかんだで助けてあげたりするじゃん?」
高「誰でも彼でもってことはないけどな。」
三「だから女の子にモテそうなのに…。」
高「俺がモテるとか笑えるだろ!あーあ、モテてみてーなぁー!」
三(そのアピールなに?なんかフォローしてほしいの?)
高「お!あれこっちの料理じゃないか?」
三「あ!料理来た!わぁー美味しそう!」
高「あったかいうちに揚げ出し食ってみ?まじで美味いから!」
三「ほんと!?じゃあ、いただきます!」
高「どお?」
三(めっちゃ私の顔見てくるじゃん。)
高「うまいっしょ?」
三「…あ、おいし!」
高「だろ?ここのほんとうめーんだよ!」
三(お腹空いてたからだけど…なんて言えない。)
高「ここも俺のお気に入りの店なんだー。」
三「優也っていつも美味しいとこ連れてってくれるよね!優也の彼女になる人みんな太っちゃう!」
高「あー、確かに。昔付き合ってた人、俺と付き合ってから太ったって言ってたわ。」
三「でしょー?きっとその彼女…元カノさん?優也とのご飯が楽しかったのかもねー?」
高「そうなんかなぁ。結局最後は自然消滅だったけどな。」
三「そうなんだ??じゃあその元カノさんがわがままだったのかもね!」
高「確かにわがままだったなぁ。なんでわかったの?」
三「ん?だってわがままって叶えられれば叶えられるほど、その限度は高くなってくじゃんん?」
高「うん。」
三「優也と付き合っておいしーものたーくさん食べるくらい、優也のすすめられたものをおいしー!おいしー!って食べてたのに、何がきっかけかわかんないけど、理由も告げずに自然消滅したんでしょ?」
高「うん、まぁ。」
三「優也じゃ叶えられない、叶えるのが難しくなるくらいわがままになっちゃたのかなぁって。」
高「なるほど。確かに。次の日が仕事でも夜中に電話かけてきたりしてた。最初は電話に出てたけど、次第にスマホをミュートにして寝るようになったもんなぁ。」
三「そりゃそうだよ。優也がお仕事頑張ってるのに私なら寂しくて声が聴きたくても我慢するもん。」
高「え?」
三「それで、会った時はぎゅーっていっぱいしてもらうの!我慢したご褒美に!」
高「そ、そうなの??」
三(あー、主任に会いたいなぁ。でも今夜は家族サービスって言ってたしなぁ。)
高「そういうものなのかな。」
三「うん!私ならそれだけで満足!あー、嬉しい!ってなるもん。」
高「そ、そか。と、とと、ところでさ…。」
三「ん?」
高「そ、そそそのぉ…沙枝ちゃんはさ、さ、最近どーなのよ?」
三(うわっ…。出た。彼氏いるの?とかそういうのでしょ?話をはぐらかすか。)
高「ほ、ほ、ほら、近況報告?みたいな?」
三「最近?あー、仕事?相変わらず忙しーよー?」
高「あ、あそぉ…。」
三「なんかさ、副主任に今度なるんだって。」
高「え?そうなの?でもまだ入ったばっかの会社じゃね?」
三「うん。主任の仕事手伝ってたら上に掛け合ってくれて、それで今度の辞令で副主任にしょーかくします!」
高「へ、へぇーすげーな。」
三「でね?でね?この主任がさ、ちょーイケメンなの!」
高「イケっ…イケメン!?」
三「うん!仕事に煮詰まってるとコーヒー淹れて私のデスクに差し出してくれたり、プレゼンの資料集めの時とかもある程度の資料を用意しておいてくれたり!」
高「そ、そ、そうなの!?」
三「はぁー…あんなイケメンって見つけた時には既に人のものなんだよねぇ…。そりゃそうだよねぇ。ほっとかないよねぇ。」
高「あ、彼女いるんだその人?」
三「ううん、既婚者で2児のパパ。子供めっちゃ可愛くてさ!」
高「へ、へぇー。」
三「毎週公園とか遊園地行くみたいなんだけど、必ず月曜日は自分のデスクにその時に子供と撮った写真飾ってるの。一回奥さんの写真も見たけどすごく綺麗な人だったなぁ…。」
三(はぁ…。なんか寂しくなってきた。今夜はタダメシだし飲んで食べて忘れよ!)
高「そ、そっか。じゃあ、沙枝ちゃんってさ…。」
三「ん?」
高「そのぉ…、いい人いないんだ?」
三(ほらきた!そーゆー話は嫌なんだよなぁ…。)
高「沙枝ちゃんってほら、可愛いし、結構モテ…。」
三「うわっ!これ、からーい!私辛いの苦手ぇー!」
高「え?あ、じゃあそれ俺が食べるから他の食べなよ。」
三「うん。ありがと。やっぱ優也って優しいね!」
高「いや、俺は腹に入るなら何でもいいだけだよ。」
三(ちょっと話逸らしとくか…。)
高「こっちちょうだい?」
三「あー!そういうの良くないよ?」
高「え?」
三「優也は優しいよ?素っ気ないところもあるけど、それが女の子によってはキュンって来る子もいる。」
高「う、うん。」
三「でもね?「腹に入るならなんでもいい」とか言っちゃダメ!」
高「そうなの?」
三「そうだよー!それじゃなんか「あー嫌々なのかなぁ~?」とか「悪いことさせちゃったなぁ~」とか思わせちゃうじゃん!」
高「そうなの?」
三「ほんと優也ってそういうところ鈍感だよねー。「腹に入るならなんでもいい」じゃなくて、「そっかぁ、辛いの苦手なのかぁ。俺は平気だからもらうね?」とか言えればいいのに…もう。」
高「あー、そっかぁ。」
三「そうだよー。そしたら女の子だってそんな優しさに惚れちゃったりするんだよ?」
高「沙枝も…そうなの?」
三(ゲッ…!こっちに話きた!)
高「そ、そういうの弱いの?」
三「私?うーん、まぁ私なら相手に食べられないって押し付けちゃうけどね?」
高「なんだそれ。」
三「だって今は優也の話してるんだもん。あ!これ美味しい!優也にもとってあげる!お皿頂戴?」
高「お、おう。」
三「へへへ。私ねぇ、結構男の人にこうしてとってあげるの好きなんだよねぇー。」
高「あ、ありがと。」
三(私が嫌いなものを多めにっと…。あ、あとこれも美味しくなかったから一緒によそっちゃえっと…。)
高「いやぁ、沙枝ちゃんにこんなことしてもらえて嬉しいなぁ。」
三「はい、どーぞ!」
高「ありがと…あ、美味い…。」
三「ね?ね?こうして人と一緒にご飯食べて一緒に美味しいねーって言えるのって幸せだよねぇー?」
高「そ…そうだね。」
三「優也はさ、女の子とどんな時間を過ごすのが好きなの?」
高「俺?そうだなぁ…、なんかさ、欲は言わないけど、散歩とかで手をつないだり、家でゆっくり一緒に映画観たりとかしてのんびりした時間を過ごしたいかな。」
三「あー、いいね!コーヒー淹れて、クッキー食べながらとか?」
高「そういうのもいいけど、アクションものの映画なら真っ暗な部屋のソファーでポップコーンにコーラかな?」
三「あはは!それもう死亡フラグじゃん!後ろから殺人鬼にやられちゃうシーンだよ!」
高「俺は洋画に出てくる非番の警官か?」
三「優也、死なないでね?」
高「え?」
三「多分そんな死に方したら笑っちゃうかもだから!」
高「あ、あはは…。笑われんのかよ俺…。」
三「さーて、次は何飲もっかなぁー!うーん、あ、これにしよ!」
高「はぁ…。」
三「なんか飲む?同じのがいい?」
高「え?あ、うん。」
三「ん?どうしたの?」
高「あ、いや…。」
三「もしかして酔っちゃった?」
高「あ、あのさ!」
三「うわっ!びっくりしたぁー。なに?どうしたの?」
高「なんで俺と仲良くしてくれてんだ?」
三(あー、やっぱそうなるよねぇ…。)
高「ごめん…、ちょっと気になっちゃってさ…ははは。」
三「なんでって…だって優也とこうしてる時間、楽しいもん!それに…」
高「そ、それに…?」
三「なーんか妙に落ち着くんだよねぇー。」
高「そ、そっかぁ。」
三(変な事される危険性なくタダメシ食えるとは言えないからねぇ…。)
高「そんなに俺って落ち着くかな?」
三「え?うーん…、まぁ、優也って優しいからさ、きっと彼女になる人は幸せなんだろうなぁ…。私もそんな人現れないかなぁ~。」
高「…じゃあ…さ、俺の…彼女になる?」
三「え?私が優也の??」
高「いや、実はさ…。」
三(気づけー!!遠回しに「お前じゃない!」ってアピールしたことに気づいてくれーーー!!!)
高「沙枝!」
三「ん?なに?」
高「俺…ずっとお前が好きだった!」
三「え…?」
高「いや、違う!好きなんだ!」
三(そーだと思ってましたよ!えぇ!だーからさっき遠回しに言ったのに!!あーもう!!)
高「でも中々言い出せなくて、こうして過ごす時間だけでもいいかなって…。だけどやっぱりずっと一緒にいたいって、そう思うんだ!」
三「優也…。」
高「いつも沙枝がどうしたら楽しんでくれるかとかずっと考えてた!好きだって言えないならせめて沙枝が喜ぶことがしたかった!」
三「…。」
高「だから…だからさ!俺とつきあ…」
三「ごめんなさい!」
高「早い!即答!」
三(それは無理無理無理無理!だって親切でご馳走してくれるだけの人だもん!)
高「清清しいほど即答!」
三「いやぁー…ね?ほら、一緒にいて楽しいよ?でも…彼女になるのは…。」
高「え?」
三「なんかさぁ、うーん。そういうんじゃないんだよなぁ…。」
高「な、なにが…?」
三(これ以上私の口から言葉を引き出すな!!なんか濁った紫色のような、よくわからない感情がこぼれだすからーーー!!!)
高「お、教えてほしい…。」
三「なんだろ、一緒にいて落ち着くよ?でもね?落ち着くだけなの。優也君、優しいから…。」
高「優也「君」!?」
三「いっぱいいいところあるよ?うん!別に嫌いとかじゃないからね?」
高「優也「君」!?」
三(いや、「君」をどんだけ引きずんだよ。)
高「あ、あのさ、えっと…。」
三「私はただ、この時間を穏やかに過ごせればいいかなって…。」
高「ほ…ら…。」
三「え?」
高「ほーら…」
三「なに?聞こえない!」
高「ほーらね!」
三「うわっ!ちょっと!いきなり大きな声出さないでよ!」
高「みーーーーーーーんなそうやって俺のことフルじゃん!」
三「いや、私は別に…」
高「あんだけ俺のこと褒めてもこうして断るじゃん!」
三「それは恋愛と友達とじゃ違うっていうか…。」
高「結局俺なんていい人止まりなんだよ…。」
三「そんなことないよ!」
高「やめろよ!…慰めんなよ…。」
三(もーーーー!「ほーらねっ!」はこっちのセリフだよ!あーあもう面倒臭いなぁ…。)
高「ちくしょう…。」
三「きっとふさわしい彼女出来るって!高橋さん!素敵だもん!」
高「とうとう苗字で呼ばれたーーーーーー!」
三「私は高橋さんの彼女にはなれないけど、必ず素敵な人と出会えるから!ね?がんばろ!高橋さん!」
高「なに笑顔で傷口開いてキムチでも漬けるのか?ってくらい唐辛子ぶち込んできてんだコイツ。辛口ってか?二つの意味で辛口ってか?」
三「まぁ、ほら!ここのお店も美味しかったし、おしゃべりも楽しいし!だから…あー、ほら!この後あそこ行こ!ダーツバー!ね?元気出して?」
高「落ち込ませる原因作った張本人が…なに励ましてんだよ…。」
三(いや、その原因を口にしたのはお前だけどな?)
高「はぁ…。」
三「なんか…ごめん。悪気はないの。」
高「もういいよ…。
三(なんで私が悪者みたいな扱いなのよ!!もう少しやり方ってあんでしょーよ!こんな対面で言われて返答に困るでしょーがぁ!!LINEにしろ!LINEに!)
高「勝手にその気になって舞い上がったのは俺の方だし。」
三(いや、ほんっっっとそれ!!)
高「カッコ悪いよな…俺。」
三(ここで、「うん、そうだね!」って言わない私。優しい。)
高「はぁ…。」
三「ごめん…。」
高「この気持ち落ち着かせるのに時間がかかると思う。ごめん。今日は帰るわ。」
三「高橋さん…。」
高「…追い打つねぇ。」
三(いや、今日ママに友達と出かけるから帰り遅くなるって言っちゃったのに!!ここまで結構遠いんだから…。)
高「で、なに?」
三「やだ…。」
高「なにが?」
三「そんなのやだよ…。」
高「だからなにが?」
三「だってこういう時、大半の男の人って連絡くれなくなったり、離れてったりするじゃん…。」
高「まぁ、そうだろうな…。」
三「そんなの私いや!」
高「沙枝…。」
三「こうして食事したりお酒飲んだりする時間が楽しいもん!だから絶対いや!」
高「ちょっと…。」
三(はぁ…、これが主任だったらなぁ…。)
高「え?ちょっと…なんかよくわかんないんだけど、俺とは一緒にいたいの?」
三「…うん。」
高「えっと…。」
三(だって帰るの面倒だし、タダメシだし…。)
高「うーんと、それは付き合ってくれるってこ…?」
三「それはない!」
高「ぐはっ…!も…う…気丈にふるまっても…倒れそう…。」
三「彼女にはならないけど、この話はもうこれで忘れてこれからも一緒にご飯たべよ!うん!ね!優也!」
高「ちくしょーーー!!もうこうなったら今夜はとことん飲む!!どーにでもなれ!!」
三「これからも一緒にご飯たべよ!うん!ね!優也!」
高「あーーーーーー!もぉーーーーー!いっつもこんなんばっかだーーーーー!こんなことになるとは思ったけどやっぱりお前もかいっっっ!!!!」
「完…?」
その後のエピソード(やるかどうかは成り行き次第)
岩「…ふぅーっ…。」
三「たばこ…。いつも終わった後に吸うよね…。」
岩「いやか?」
三「ううん。ねぇ…主任…。」
岩「どうした沙枝?」
三「ううん。ずーっとこうしていたいなーって。」
岩「沙枝…。」
三「あんっ…もう…、まだする気なの…?」
岩「いいだろ…?」
三「だってそこ…あんっ…。」
岩「じっとしてろよ…。」
三「う、うん。」
岩「どうした?」
三「ううん。なんでもない。」
岩「そういやこの間、世話になった人の付き合いで食事行ったんだろ?」
三「あー、うん。」
岩「なんかあったのか?」
三「うーん。…告白されたの。」
岩「…ふーん。」
三「なんか反応薄い…。あ、やだ!そこは…。」
岩「んで?付き合うのか?」
三「え!なんで?私…太一とこうしていたい!」
岩「そっか。大人しくしとけよ?じゃないと…危ないから。」
三「ええ!そんなところに!?しかも…いれ…るの?」
岩「ああ、俺はこういうのが好きなんだ。」
三「でも…。」
岩「沙枝も嫌いじゃないだろ?…こういうスリルは…。」
三「え…でも、いままでした人とはこんなこと…。」
岩「じゃあ俺が初めての男だな。」
三「でも…そんなところに入れたら…崩れちゃう…。」
岩「大丈夫だ。俺に任せろ。今までも何度もこうしてきたからな。その辺の奴らよりは上手いんだよ。」
三「あっ…ああ…。」
岩「ほらな、入るんだよ。俺ならな。」
三「ほ、ほんとだ…太一って指先…器用なんだから…。でもそういう太一が…好き。」
岩「その男ってどんな奴なんだ?」
三「えっ…、あぁ…前に話した元カレとのことで相談してた人。」
岩「ふーん。」
三「やけに聞くね。気になるの?」
岩「いや、こういうのは多少心理を同様させることで、相手との駆け引きに有効なだけさ。気持ちが揺らぐと思考が定まらないだろ?そうやって俺の手に落ちていくんだ。」
三「太一ってさ…すごく優しいのに、時折怖い…。」
岩「そか。」
三「うん…。」
岩「さぁ、沙枝。今度はお前がやってみな。」
三「で、でも…もう、触るのも怖い…。壊れちゃいそう…。」
岩「ふっ…。そういいながら指先が震えながらも触ってるじゃないか。可愛い奴だな。」
三「バカにしてる?」
岩「いや?俺は今、沙枝の心にではなく…この行為に集中しているだけだ。」
三「子供思いで優しい父親…、その優しさを私にも欲しいと言ったら…。」
岩「沙枝…。」
三「ごめん。なんでもない。続けるね。」
岩「ああ。…沙枝、随分うまくなったな。その指使い。良い感じだ。」
三「ほんと!?」
岩「ほんとだ。そのままゆっくり…そう。その調子だ。」
三「私頑張る…太一が喜んでくれてるから…。はぁ…はぁ…。」
岩「うっ…、こりゃ…参ったな…。じゃあ俺はここを…。」
三「え!?うそっ!ちょっ…もうダメだってぇ…。私…ほんとに…壊れちゃうからぁ!!」
岩「さぁ、沙枝。そろそろ限界だろ?」
三「う、うん…。あ…あ…あん…。」
岩「どうする?やめるか?」
三「いや!やめないで!お願い!私、ちゃんとやるから!」
岩「わかった。沙枝…俺に見せてくれ。壊れ行く様を…。」
三「う…うーん…、あ!だめ!もう無理!おかしくなりそう!だめ!壊れちゃうぅ!!あーーーーー!!!」
岩「あーあ。沙枝の負けだね。」
三「ん-!もう!大体、太一ってば一回とったパーツを上に積み重ねるのに、そうしないでわざわざ空いてるところに差し込んだりする??」
岩「それが俺流のジェンガだからな!」
三「でもさ…途中で凄い優しい目をしたでしょ?」
岩「そうか?」
三「うん。子供の話したとき。」
岩「あぁ…、そうかな。」
三「うん、子供にはちょっと嫉妬したけど、私を見つめる目が優しくてキュンときちゃった!」
岩「そっか。そろそろメシでもいかないか?腹減ってきた。」
三「あー!こないだ初めて行った店でしょー?私から…。」
岩「「私辛いの苦手だからね!」だろ?」
三「え…、太一のそういうとこ…好き。」
岩「他にも色々美味そうなのあったしな。」
三「うん!あ!私、あれ食べてみたい!黒糖きなこ餅アイス!」
岩「そりゃメシじゃないだろ?」
三「へへへっ、いいの!ジェンガ片づけて行こ!」
岩「そうだな。ところで、さっきの話の世話になった人ってそのあとどうなったんだ?」
三「え?気になるの?」
岩「さぁ…?なんとなくな。」
三「ふふふ、なーいしょっ!」
完